平成27年度糸魚川ジオパーク学術研究奨励事業

平成27年度糸魚川ジオパーク学術研究奨励事業において採用された
大学生、大学院生、若手研究者による学術研究の採択事業を紹介します。

【糸魚川ジオパーク学術研究奨励事業】

 糸魚川ジオパーク地域を対象とした学術調査及び研究を支援し、糸魚川ジオパークの学術資料の蓄積を図るため、大学生、大学院生を対象に調査研究費の助成をします。

【対象となる研究】

【平成27年度糸魚川ジオパーク学術研究奨励事業 採択事業一覧】

No. 事業
1

糸魚川市大久保地域の大久保地すべりについて

2 糸魚川-静岡構造線北部の地熱水の水文地球化学的研究
3 糸魚川市根知川周辺における、主に糸魚川-静岡構造線に関わる構造地質学的研究
4 糸魚川西部地域に分布する中生界における地質学的・古生物学的研究
5 糸魚川青海地域の高圧変成岩類の変成作用と上昇定置プロセス
6 糸魚川ジオパークによる住民意識・活動の変化と、地域活性化のための新たな住民活動の提案
7 農商工連携におけるジオパーク関連商品の発掘・開発とそのジオストーリー構築
8 糸魚川の降雪に着目したジオパーク学習教材の開発
9 ジオパーク認定並びに新幹線開通に伴う地域振興及び地域経済にかかわる調査研究(糸魚川と白山の比較研究から)

No.1

<研究の名称>
糸魚川市大久保地域の大久保地すべりについて
<氏名・所属>
江川優大(新潟大学理学部地質科学科)
<研究の目的と内容>

 大久保地すべりは長さ約1,700m、最大幅400mの規模を有し、非常に豊富な地下水として特徴づけられる。地すべり対策の歴史は古く、国内で最初に排水トンネルが施工された地すべり地として知られている。しかしながら、複雑な地質条件と相まって、地下水の涵養から地すべり地への流入に至る流動経路および水文地質構造には不明な点が多い。本研究の目的は、効果的な地すべり防災対策を視野に、これまで不明であった水文地質構造を解明することである。野外調査を実施し、地下水・湧水のサンプルを定期的に採取し、水質分析、環境同位体分析を行う。分析で得られたデータ指標(追跡子)として、地下水の涵養域、流動経路を解析し、大久保地すべり地における水文地質構造を明らかにする。


No.2

<研究の名称>
糸魚川-静岡構造線北部の地熱水の水文地球化学的研究
<氏名・所属>
藤井健太朗(新潟大学理学部地質科学科)
<研究の内容>

 近年、非火山性の高塩分温泉の起源が、深部流体起源ではないかとされており、各地の温泉水がその起源を見直されている。糸魚川-静岡構造線北部地域でも塩化物泉・炭酸水素塩泉が湧出しており、溶存成分分析・同位体分析にかけることで、その起源を明らかにしていきたい。


No.3

<研究の名称>
糸魚川市根知川周辺における、主に糸魚川-静岡構造線に関わる構造地質学的研究
<氏名・所属>
高久奨平(新潟大学理学部地質科学科)
<研究の内容>

 新潟県糸魚川市から長野県小谷村にかけての糸魚川-静岡構造線は横川断層と呼ばれ、西側の先新第三系と東側の新第三系の境界断層と認識されている。しかし糸魚川市では横川断層の断層露頭は一つしか発見されておらず、同断層の延長や幾何学が明確でないために、文献によって同構造線の位置や方向・幾何学が異なっている。また、同構造線北部周辺の断層系の幾何学や変形作用についての研究もほとんどなされていない。そこで、本研究では、同構造線(横川断層)周辺の岩相分布・層序や地質構造を詳細に把握し、同構造線の位置・延長問題を解決するとともに、同構造線とそれに関わる断層系の幾何学や変形作用、テクトニクスを明らかにすることを目的とする。


No.4

<研究の名称>
糸魚川西部地域に分布する中生界における地質学的・古生物学的研究
<氏名・所属>
鹿澤優祐(新潟大学大学院自然科学研究科)
<研究の内容>

 糸魚川西部に露出する中生界、手取層群・来馬層群をターゲットにそれぞれの地質の特徴を野外調査や薄片作成・観察、各種分析を行い、層位関係や地史、堆積環境、後背地推定、産出化石の同定などを行う。昨年度は小滝川沿いに分布する来馬層群を対象とし、柱状図を作成し、植物化石の産出層準を確定させた。今年度は、昨年から引き続き小滝川沿いに分布する来馬層群を調査し、より広範囲にわたって柱状図を作成、軟体動物の産出層準を明らかにする。加えて、礫岩の記載・検討をより詳細に行い、層準ごとの変化及び他地域との比較を行い、後背地についても考察する予定である。候補としては、湯之谷の上流域を調査する予定である。


No.5

<研究の名称>
糸魚川青海地域の高圧変成岩類の変成作用と上昇定置プロセス
<氏名・所属>
吉田拓海(新潟大学大学院地球科学コース)
<研究の内容>

 糸魚川市西部の青海地域には古くから様々な変成岩類が蛇紋岩を伴い産することが知られている(Banno,1958;松本,1980など)。本地域の変成岩は3~4億年以上前に形成されたもので、沈み込み帯の変成作用の日本における最も初期の情報を持つ地質体である(椚座・後藤,2010など)。また本地域ではTsujimori(2002)により、全く変成作用の異なる二種類の変成岩ユニットが存在するとされている。しかし過酷な地形や地質構造の複雑さから、両ユニットがいつどのようにして現在のように接したかについては解明されていない。去年の研究では本地域に分布する変成岩を調査し、その詳しい分布を明らかにした。しかしまだ変成岩が分布する範囲のすべてを調査しきれておらず、変成岩全体の関係性を明らかにできていない。今年は調査の範囲をより南東側へ進め地域全体の地質構造を明らかにするとともに岩石学的検討及び各種化学分析を行い、さらに年代分析による時間的な観点も加えることにより日本最古の高圧変成岩のテクトニクスを解明することを目標とする。


No.6

<研究の名称>
糸魚川ジオパークによる住民意識・活動の変化と、地域活性化のための新たな住民活動の提案
<氏名・所属>
伊藤凛(新潟県立大学国際地域学部国際地域学科)
<研究の内容>

 糸魚川ジオパークを主に変化しつつある糸魚川に対して、糸魚川の現状を調査し、地域住民の意識や活動を調査する。また、他の国内世界ジオパーク認定地域における住民活動との比較研究により、地域活性化のための新たな活動を提案する。


No.7

<研究の名称>
農商工連携におけるジオパーク関連商品の発掘・開発とそのジオストーリー構築
<氏名・所属>
坂口豪(首都大学東京大学院都市環境科学研究科)
<研究の内容>

 本研究で着目するのは、ジオパークにおける特産品や食もしくはお土産物などの「ジオパーク関連商品」である。日本のジオパークの多くは自然環境に恵まれた場所に位置しており、「大地の恵み」と称して、多くのその土地ならではの特産品がパンフレットやホームページで特集されている。昨年の研究でも本助成金の一部を使用して、「大地の恵み」としての「水」に着目し、糸魚川の日本酒にまつわるジオストーリーの構築可能性について論じた。その他にも、「大地の恵み」に着目した商品開発などの事例を紹介する学会発表などは多くみられるが、学術的な観点からジオパークにおけるジオパーク関連商品の開発やマーケティングを論じたものは少ない。昨年の研究においてもジオパークによる日本酒のブランド化やマーケティング戦略についてまでは論じることができなかった。

 そこで、本研究ではジオパーク関連商品のジオパークを活用したブランド化やマーケティングへの意識について解明していくことを目指し、糸魚川ジオパークにおけるジオパーク関連商品の開発と普及、販売プロセスを明らかにし、糸魚川ジオパークにおけるジオパーク関連商品の優位性及び課題を明示することを目的とする。


No.8

<研究の名称>
糸魚川の降雪に着目したジオパーク学習教材の開発
<氏名・所属>
田中岳人(早稲田大学大学院教育研究科)
<研究の内容>

 糸魚川の平野部は周辺都市と比べ降雪が少ないといわれる一方、山間部での降雪は多く、雪は糸魚川の地域的特色を形作る要因である。この降雪と地域的特色のかかわりについて、特にジオパークで重要とされる自然科学的側面と、地域に伝わる伝承や民話といった文学的側面の両面からアプローチし、総合的なジオパーク理解のための教材を開発することが本研究の目的である。

 本研究にあたって、①糸魚川の気象データ(降雪データ)の分析を行い、その結果と各地域の伝承や民話との対応関係を調査して地図にまとめる。②ジオパークのふるさと学習や防災学習を意識した、雪と糸魚川ジオパークに関する教材を開発する。ふるさと学習に対しては、総合学習副読本と連続する内容での発展学習用教材とする。防災学習としては、雪崩や融雪水の「災害と恵み」について教材を開発する。


No.9

<研究の名称>
ジオパーク認定並びに新幹線開通に伴う地域振興及び地域経済にかかわる調査研究(糸魚川と白山の比較研究から)
<氏名・所属>
風聡一郎(金沢大学大学院人間社会環境科香坂玲研究室)
<研究の内容>

 ジオパーク認定に伴う地域経済への波及効果について、国際的な認定があり、ジオパークに特化している糸魚川と、エコパークと国内認定がある白山の二つの地域について比較検討を行う。

 具体的な研究内容としては、以下の5点を実施し、行政、企業、住民、旅行者などの異なる主体のジオパークをめぐる動向、取り組み及びその効果を明らかにする。

  • ①議会での議論を対象としたテキストマイニング手法による定量的分析
  • ②認定地域内での協議会等の意思決定プロセスと参画団体の役割分担調査
  • ③ロゴや地名を冠した農産品の価格の変動調査
  • ④お土産品等でのロゴマークの扱いとその品目・地理的な広がりに関する分析
  • ⑤地域への訪問者数、特に修学旅行生といった教育目的の訪問者数の変遷とその受け入れ態勢の把握

 糸魚川ではジオパークに特化し、学習に特化した旅行形態が比較的成功していると指摘されているが、本研究ではそのような戦略について定量・定性的に把握し、認定の効果を「見える化」することを目指す。また、他地域での活動への示唆や展開の可能性を得ることを主眼として比較分析を行う。とくに白山は2011年の日本ジオパーク認定後、同認定を活用した観光客誘致や経済への波及をめざし、積極的に活動を行っている。このような糸魚川と白山における戦略や実践内容を比較することによって、ジオパーク認定を地域振興に活かすための有効策を検討する。

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